(書評)『さよならドビュッシー』中山七里(著)

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『さよならドビュッシー』中山七里(著)

最後の最後まで手に汗をにぎりながら読み終えた。

音楽ミステリーというジャンルは初めてだったが、思えばどちらも大好きなテーマなので、面白くない訳がない。

本当もっと早く読んだらよかった。

タイトルにもある、ドビュッシーは僕も大好きな音楽家である。

特にピアノ曲の美しさは最高で、どう表現したらよいのか。

作者の表現を借りれば、

「煌めく音、弾ける音。
この曲はまるで音の宝石箱だ。どの音を取ってもすべすべと滑らかで、放り投げると宙空をどこまでも軽やかに転がっていく」

と、アラベスク第一番について書かれている。

この物語はミステリーではあるが、

主人公がピアニストを目指すという成長物語でもある。

ピアニストを目指すのかどうか先生の言葉がとても熱い。

「ピアニストになるということは、ただピアノを弾いていて楽しいなんてことじゃない。ピアノ弾きとピアニストという言葉があって、この二つは似ているけど全く違うものだ。ピアノ弾きは譜面通りにただ鍵盤を叩くだけ。しかしピアニストは作曲家の精神を受け継ぎ、演奏に自らの生命を吹き込む」

ピアニストかっこよすぎだ。

主人公はこの先生に導かれて、

めきめきと上達していく訳だが、

やはり大切な人と出会えるかが、

人生の岐路において重要だと思う。

そんなわけで、

次作の『おやすみラフマニノフ』も読むことに決定である。

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