「英雄の書」黒川伊保子(著)
2010年、チリで起きた落盤事故を覚えているだろうか。
33人の作業員が地下600mに69日間も閉じ込められ、全員が生還した。奇跡のような出来事だった。
33人は、11人ごとに3グループに分けられたそうだ。グループは3つの仕事を交代で順繰りにこなしていった。
「休憩(睡眠)」
「活動(身体を動かしたり、食べたりする)」
「見守り(他者を見守り、変化があれば声をかけ、話をいてやる)」この3つ目の「見守り」が秀逸だった、危機管理の専門家は言う。
人は、自分の不安と向き合うと耐えられない事態でも、他者を案じていれば強くなれる。免疫力が上がる。
大切な誰かを守ること。それ以上の使命感はない。
僕にもトラブルはある。
もちろん生死に関わるものではないのだけど。
それなりにトラブルは訪れる。
それはたいがい突然訪れる。
でも起きてしまった現実は事実だ。
誰かのせいにしたところで現実は変わらないし、
起きてしまったことは正しいと思うしかない。
そんな時、
僕はいったい誰を守りたかったのかと問うてみる。
僕にもありがたいことに守りたい人はいた。
幸せに満ちた人生を歩んでほしいと心から思っている。
それじゃ僕にできることはなんだろう。
少なくとも、
仏頂面をして、
落ち込んでいる場合ではない。
ましてや自暴自棄になるのもナンセンスだ。
でもね、
大切な誰かを守るのだと、
思い始めてみると、
視界が開けてくる感覚になるからほんと不思議だ。
さあ姿勢を正して、
笑顔で前に進もうじゃないか。